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坂上忍氏・土田晃之氏によるananの腐女子記事がどうしようもない

ananで連載されている、坂上忍さんと土田晃之さんの『あなたがいいならそれでいいけど』。毎回いろんな「女子」にスポットを当てて、「アリ」か「ナシ」かをお二人が回答する、みたいな趣向のようです。


現在発売中の号で取り上げられたのは「腐女子」。ですが、この内容が偏見ばかりで実に醜悪。ツッコミ入れようとすると全編ツッコミの嵐になりそうなんですが、ひとつひとつやっていきます。

 

以下記事へのツッコミ

まず前フリの説明文から。

【ふじょし】 マンガ、アニメの登場人物など、美少年同士の恋愛を愛好する女性のこと。

腐女子やBLの説明文で「美少年」に限定してるのよくあるけど、美少年同士とは限らないですよ。中年にも老年にも萌える人はいるし、美しいかどうかも主観によりますし。たとえば作中で「美少年」と明示されてるキャラにしか萌えない、という人は少数派でしょう。*1あと腐女子の中でも諸派あるけど、女体化はどう位置づけるんでしょうか。

次に、坂上忍さんの回答から。

性癖は個人の自由だけど、ちょっとフツーじゃない感じ。
だいぶ歪んでる気がしますね。

「フツーの性癖」ってなんでしょうね。自分ありきで男女妄想するなら「フツー」なんでしょうか。男女であれば、たとえば「愛している男性の肉を食べたい女性」「女性を拉致監禁して嬲り殺す妄想が好きな男性」「血の繋がった兄とセックスしたい女性」などは全部「フツー」だが、男性同士の恋愛を女性が妄想するのは「フツー」じゃない、と。渋谷の駅前でデモしてる人たちみたいな発言ですね。

そんな妄想しているヒマがあるなら、ちゃんと男女の恋愛をしてほしいですよ。

なんでBL妄想と男女の恋愛が排他的な関係にあると決めつけてるんでしょう。彼氏や夫がいる腐女子なんて珍しくないですよ。
それと、この論理だと腐女子内にいる同性愛者や無性愛者にも男女恋愛を勧めていることになりますが、余計なお世話すぎて失礼極まりないです。

きっと汚い現実から逃れるための世界なんでしょ。美化された世界にいたいんでしょうね。

妄想だからね。「うちの庭から石油が出ないかなあ」とか、「優しかった死んだおばあちゃんがそばにいてくれたらなあ」とか、妄想は美化されていて現実にはありえないものが大半ですね。

ただ、”腐”を用いている時点で、自嘲的というかネガティブな認識はあるんですよね。それならOK! そこをしっかり認識しておきなさい!

やんごとなき坂上様からそのようなお言葉を賜る幸せ、恐れ多いこと限りなくうんぬん(以下略)
腐女子腐女子と名乗るのは自虐だけど、それが自虐として通じるためには「同性愛妄想することは腐っている」という差別的思考と関係がないとは言えない、と思いますけどね。ただし外野から「お前らは腐ってるんだからしっかり自覚しろ」とか言って蔑視を正当化されるための名称じゃないことは確かです。

続いて、土田さんの回答から。

なんで男同士の恋愛まで妄想するに至るのかが、まったく分からないですね。”男女”でいいじゃないの。せめて自分を主人公にした恋愛妄想のほうが、よっぽど健全ですよ。

上の坂上さんへのツッコミと同じですが、「自分を主人公にした」「男女」の恋愛妄想なら「健全」、という価値観はこの手の腐女子批判には頻出しますね。二次元キャラやアイドル好きは否定していないことから、男性オタクが女性キャラと恋愛妄想したり、女性オタクが男性芸能人との恋愛妄想する場合はこの論理だと否定されない、ってところもポイントだと思います。ガンダムオタク芸人としての土田さんのファン層を考えれば、ガンダム好きな男性オタクや芸人ファンの女性は逃したくないですよね。自分のファン層に多く含まれそうなオタクがする妄想を「健全」と呼び、それ以外を「健全じゃない」と規定する、一種のファンサービス的な発言かもしれないですね。安い媚びだなあと思いますが。

きっと、完全に現実逃避な人たちなんでしょうねぇ。
この世界に籠城しちゃう前に、生身の彼氏を作ってくれ

たとえば萩尾望都先生は一度もご結婚されたことなくずっと独身でいらっしゃいますが、土田さんは萩尾先生にお会いしても同じことを言うんでしょうか。お前の人生でなしたことは完全に現実逃避だから、早く生身の彼氏を作れ、と。日本の漫画史において、萩尾先生はじめ24年組の先生方が形作ってきた少年愛作品の功績は数え切れないものがありますが、それよりも「生身の彼氏」が大事だというのでしょうか。
萩尾先生のお父様は生前、先生の仕事を「お絵描き教室」と認識し、そんなお遊びは辞めて早く結婚しろと言い続けて先生を苦しめた*2ということですが、土田さんの発言はこのお父様と似通ったもののように読めます。
まさか、職業としてやっているBL作家ならよくて、趣味でやってる腐女子はダメとは言いませんよね。文中では分けて語っていないのだから、ここで言う腐女子には萩尾先生も竹宮先生も山岸先生もよしながふみ先生も羽海野チカ先生も、もちろん含まれます。BL妄想を男女恋愛の「代わり」「妥協の結果」のように言うのは、こういった先生方の仕事も同じようにバカにしている。

 

まとめ

とりあえずツッコミはこんなところです。この「腐女子」が「オタク」、「男性同士の恋愛妄想」が「二次元キャラ・アイドルとの恋愛妄想」だったとしたら、猛烈な批判が出ていて当然の内容だと思います。ところが現実には少なくない層が「でもやっぱり男同士で恋愛させるのってキモいよ」と同意してしまうんですよね。男同士なのが問題であり、男女なら問題ないというなら、それはホモフォビアと見なされても仕方ないと思います。

私が一番がっかりするのは、これがananという女性向け雑誌に載ったという事実です。男性芸能人の発言を借りてきて腐女子をバッシングする女性誌って構図なんですよ。当然、anan読者にも腐女子がいないわけないのですが、お金を出して読んでいても腐女子は読者層として認めないって宣言なのでしょうか。メイク雑誌のVOCE執事喫茶を盗撮して炎上したことがありましたが、男性の権威を借りているように見える点で、このananはより悪質とも言える。

最後に、この件で「やっぱり腐女子が自重しなくなって大騒ぎするようになったから、こういう批判も当然では……」みたいな反応をしている男性や女性を見かけましたが、このananみたいな偏見による腐女子批判と自重はなにも関係ありません。「男性同士の恋愛妄想を好む」という個人の内心を指差して笑うような人たちが、実際に腐女子が自重しているかいないかなんて気にするわけがない。繰り返すけど、個人の内心が笑われてるんですよ。自重するしないなんて、批判する側は気にもしてない。関係ないものを無理やり関連づけて自重マナー強要する自分勝手な人たちが出ないことを祈ります。

 

それにしてもanan、抱かれたい男ランキングとか男性アイドルのグラビア号とか、買い支えてるのは腐女子も多く含まれるオタク女性層だと思うんだけどなあ。

*1:男性向けだと「美少女」という言葉が実際の美醜とは違った位相でカテゴリー化されてる気もしますが。

*2:http://korobomemo.blog110.fc2.com/blog-entry-105.html